今年は7月21日が土用の丑の日でした。密を避ける生活が続く中、感染対策をとってウナギ屋さんに並ぶ人々の行列が報道されていました。

8月2日も二の丑ということで、今夏は丑の日が2回もあります。

先日はウナギの稚魚が豊漁だったというニュースでもちきりでした。ウナギを食べる機会が増えそうで、ウナギ好きには喜ばしいことですね。

ウナギを安い値段で頻繁に食べられたらいいですね。 最近のウナギ事情はどうなっているのか調べてみました。

普段日本人が食べるウナギはどこから来ているの?

日本で主に食べられているニホンウナギは流通の99%以上が養殖物です。

多くはありませんが、川で釣った天然ウナギを調理して提供する店もあります。

養殖と天然の見分け方として、一般的に胴の周りが太く、腹の色が黄色がかったものが天然とされていますが、実際の天然ウナギは生息環境やエサによって色、模様、体型が変化するため、見た目で識別することは難しいようです。養殖も遜色ないとはいいますが、天然はやはり人気があります。

またそれ以外に、輸入ウナギも流通しています。

最も多く流通する養殖ウナギについて

ウナギについては、生態に謎が多くわからないことがたくさんありますが、自然界のニホンウナギは、川で過ごした親ウナギが海へ下り、日本から2,000キロ離れたマリアナ諸島付近の海域で産卵することが近年の研究で分かってきています。

稚魚はその後、黒潮海流に乗ってシラスウナギへと成長しながら冬から春にかけて東アジアまで到達し、日本近海にやってくるのです。

シラスウナギまで成長したものは、体型は成魚に近くなっているものの、体はほぼ透明で、全長は5㎝程度、重さは0.2グラムほど、つまようじくらいの大きさです。卵から孵化して150~500日経つころシラスウナギとなります。シラスウナギの漁期は、だいたい12月から翌年4月いっぱいまでとされています。このシラスウナギが2014年以来、今年は豊漁でした。

   年2014201820192020
漁獲量(トン)17.48.93.717.1
シラスウナギの漁獲量 (水産庁による)
                                 

日本、中国、台湾、韓国の4か国・地域では、シラスウナギを網ですくうなどして採捕、池で養殖します。半年ほどで重さが1000倍の200グラム前後になり、出荷できるようになります。1年半ほど育てて大きめのサイズで出荷する養殖の仕方もあります。

このようなシラスウナギ時代を経てニホンウナギとなるのですが、実はニホンウナギは絶滅が危惧されています。上記の表で漁獲量が17.4トンとなっている2014年、国際自然保護連合(IUCN)はニホンウナギをレッドリストに載せました。そしてこの年を境に国際的な資源管理がされるようになり、消費大国である日本が中心となって、中国・韓国・台湾・韓国で資源管理の国際的な枠組みを作りました。法的拘束力はないものの、養殖池に入れるシラスウナギの量に上限を設け、14年比で20パーセント削減を目標に取り組んでいます。

養殖業者が稚魚のシラスウナギを養殖池に入れる量(池入れ量)の日本の上限は21.7トンです。表でもわかるとおり、令和2年のシラスウナギの国内漁獲量は17.1トンで、過去最低だった昨年3.7トンの4.6倍なので、大幅に増えました。さらに3.0トンを輸入しているので池に入れたシラスウナギの総量は20.1トンになっていました。上限が設定された2015年以降では最大です。

「豊漁」と言われた背景にはこのような事情がありました。

ただ、全日本持続的養鰻機構の担当者によると、今年池入れしたシラスウナギは秋以降の出荷になるとのことです。一部出てきているものもありますが、今流通している養殖ウナギは2019年より前に採捕されたものである可能性が高いと言えます。水産庁担当者によれば、シラスウナギの漁獲量は、端的にウナギの価格につながっていないとのことです。

スーパーに出回るウナギの価格はシラスウナギの漁獲量・価格を比較的反映しやすいようですが、かば焼きを提供する料理店では、一度値上げをするとなかなか値下げできないという事情もあるようです。かば焼きは冷凍すると3年以上保存できるので、業者が翌年の漁獲量を想定しながら値段を決めています。

ウナギの完全養殖は課題が山積

以上の養殖のほかに、成魚が産んだ卵を人工ふ化させてそれを成魚に育てて、その成魚にまた卵を産ませるという「完全養殖」があります。

2014年に水産研究・教育機構(旧水産総合研究センター)が、その後、株式会社いらご研究所も完全養殖に成功していますが、いまだ市場には出回っていません。

現在の技術ではまだシラスウナギの大量生産は難しく、コストの面から実用化のめどが立ちません。卵がふ化してからシラスウナギになるまで時間がかかることと、他の魚の稚魚が食べるようなエサを食べないので手間がかかる、といった理由が挙げられます。

2019年11月に、近畿大学水産研究所がニホンウナギの人工ふ化と50日の飼育に成功したと発表しています。近畿大学は近大マグロの完全養殖の実績があります。完全養殖のサイクルが出来るまで最短で4年かかるとのこと、近大は早くて2023年に完全養殖ウナギの系列飲食店での提供を目指しているそうです。

ただ、現在はまた完全養殖で採算をとることは難しいといわれています。

まとめ

水産庁の担当者によると、近年不良が続いていたシラスウナギが今年豊漁だった理由についてははっきりしたことがわからないそうです。生態に謎が多く、豊漁・不良の根本的原因も明らかでないので、来年以降もどのような状況になるかわかりません。

ウナギに関しては簡単に値段が下がることはなさそうです。まだまだ謎も多く、生態についても研究が進められています。

絶滅危惧種でもあるウナギ。次回の丑の日には、ウナギの謎に思いをはせながら食卓を囲んではいかがでしょうか。