近年は蛇をペットとして選ぶ方も増えてきました。
蛇といえば毒を持っているとか、噛みつくとか怖いイメージが定着しているかと思いますが、ペットとして流通している蛇の中には無毒でおとなしい種類もいるんですよ。
本記事ではペットスネークとしておすすめの種類を紹介します。

初心者にもおすすめの種類

コーンスネーク

ナミヘビの仲間で、蛇を飼育するといったらまずおすすめにあがるのがこの種類。コーンという愛称で親しまれています。

トウモロコシ畑によく現れることや、お腹の模様がトウモロコシに似ていることから、コーンスネークと名付けられたと考えられています。

寿命は平均10~15年で、全長120cm~150cmほどに成長します。

かなり長く感じると思いますが、基本的に蛇はまっすぐでいることはないので、
大きいケージでなくても終生飼養が可能です。
また、コーンはアダルトになってもそこまで太さはないので、実際に見てみると意外と小さく感じられると思います。

コーンの性格は基本的に温和で、環境への順応力も高く初心者でも扱いやすい蛇です。蛇を飼育する上で気を付けたいトラブルである拒食も少ない傾向にあります。

モルフ(品種)も豊富で、見ているだけでも十分に楽しめます。
中でもブリザードと呼ばれているモルフは白い体に赤目と神々しい見た目をしていて、とても美しいですよ。

ボールパイソン

ニシキヘビの仲間で、その中でもペットスネークとして断トツの人気を誇るのがこのボールパイソンです。
初心者にもおすすめのペットスネークといえばコーンかボール!といわれるくらいポピュラーな種類です。

別名はボールニシキヘビ、ロイヤルパイソンなどがあり
ボールという愛称で親しまれています。
ボールのように丸くなって防御態勢をとることからこの名前が付けられたと考えられています。

寿命は平均10~20年で、上手に飼育すれば30年ほど生きることもあります。全長は150cmほどに成長し、まれに大型化する個体もいます。

ボールは基本的に臆病で、おとなしい蛇です。

積極的に飛んでくるような荒さはありませんが
臆病な反面、拒食になる個体も少なくないです。
また、特に臆病な個体なんかだとそれなりに咬むこともあります。

しかしそういう個体は攻撃性が強いというよりも、身を守るための攻撃といった感じなので、なるべく怖がらせないようにうまく付き合っていくことが大切ですね。

また蛇の中でもボア科、ボア亜科、ニシキヘビ科、クサリヘビ科、マムシ科が持つ赤外線を感知する器官をピット器官というのですが、ボールパイソンにもピット器官が備わっています。

主に臭い、熱、振動、あまり良くないといわれていますが目を補助的に使って餌を探しているので、手に餌の臭いがついていたり、餌より手の温度が高かったり、目の前で手を揺らしたりすれば餌と間違えて餌と間違えて飛びついてくることもあります。

ボールパイソンの魅力といえばなんといっても、そのずんぐりとした体形です。触り心地もひんやり、もちもちといった感じで、触ってしまえばもう最後です。確実に惚れます。

ナミヘビは大体細身でシュルシュルと素早く動くのに対し、ニシキヘビはずっしりと構え、そろそろと動くので同じ蛇といっても結構違いがあります。

またモルフも豊富なのでコレクションする楽しみもありますよ。

カリフォルニアキングスネーク

ナミヘビの仲間で、こちらもまたペットスネークとして人気の種類です。
魚類、両生類、小型の哺乳類、爬虫類、鳥類やその卵、更には同族である蛇すら食べてしまう事から蛇の王という意味を込めてキングスネークという名前が付けられました。
猛毒を持つガラガラヘビも食べてしまうという非常にワイルドな蛇です。

大体名前にキングがついているものは、蛇も食べてしまうので繁殖の際に一緒にする場合はよく注意してください。

寿命は平均15~20年で、全長は120~180cmほどに成長します。

性格はなんといっても“食に貪欲”その一言に尽きます。
個体差もありますが、拒食知らずともいわれているだけあり、動くものは何でも餌と認識しているといっても過言ではないと思います。

その性格ゆえ、ハンドリングの際は気を付ける必要があります。
びくびくと触ろうとするより、さっと持ち上げてしまった方が安全です。

ちなみに咬まれても多少血は出ますが大けがするようなことにはならないので安心してください(顔に飛んで来たら危ないですが)

ナミヘビなんかは顔も小さいのでそこまで痛くないし、慣れてくると咬まれても「食いしん坊だなー」と余裕をもてるくらいになってきますよ。

メキシカンブラックキングスネーク

筆者宅のメキブラです

ナミヘビの仲間で、先ほど紹介したカリフォルニアキングスネークの仲間でもあります。
別名クロキングヘビとも呼ばれ、メキブラの愛称で親しまれています。

寿命は平均15~20年で、全長は100cmほどとやや小さい印象です。

多少カリキンより珍しいかと思いますが、ペットショップでも流通していることがあります。筆者のメキブラもペットショップ出身です。

基本的な性格や性質はカリフォルニアキングスネークと同じで、こちらもハンドリングの際は注意が必要になります。

筆者の飼育していたメキブラはもうとにかく何でも食べちゃう子で非常に手を焼きましたがそこがまた可愛かったです。ハンドリングの最中に指を見つけそーっと口に入れるような子でした。

メキブラの魅力はその貪欲さに加え、真っ黒なその体の色です。
ただ、主に流通しているメキブラはあごの下に白いワンポイントがあるので、全身真っ黒というわけではありません。完全に真っ黒な個体をジェットブラックとよびますが、中々珍しくやや高価です。

セイブシシバナヘビ

ナミヘビの仲間で、ウエスタンホッグノーズスネークと呼ばれることもあります。その名の通り豚やシシのようにとがった口吻が特徴的な蛇です。

寿命は平均10~15年で、全長は30~60cmと小さいです。

シシバナヘビの中でも、セイブシシバナヘビ、トウブシシバナヘビ、ナンブシシバナヘビと様々な種類がいますが、シシバナヘビは主にカエルなどの両生類を餌としているので、種類によってはカエルしか食べないものもいます。

本記事で紹介しているセイブシシバナヘビは食性の幅が大きいのでマウスに餌付く個体も多いです。一般的にシシバナヘビとして販売されているものは、セイブシシバナヘビと思っていいでしょう。

性格は温厚ですが、私見では臆病な個体が多いように感じられます。

全体的にずんぐりとしていて、のそのそといった感じに動き、いい意味で蛇という生き物の枠から外れているような、魅力のある蛇です。
また餌の食べ方も独特で大変可愛らしいですよ。

しかし、セイブシシバナヘビは後牙類の毒を持つ蛇です。
後牙類というのは上顎の後方に毒牙を持っている蛇のことです。毒蛇で有名な日本の在来種、ヤマカガシも同じ後牙類なんですよ。

セイブシシバナヘビの場合は唾液に神経毒をもっていますが、その毒は弱いものなので命に関わるようなものではありません。
しかし、長く咬まれているとアレルギー症状が出たり、赤く腫れあがったりします。

ただ基本的に温厚な蛇なので積極的に咬んでくるようなことはそうそうないといってもいいでしょう。深く咬まれなければ毒の心配もありません。

セイブシシバナヘビは休眠状態になりやすくちょっとした温度の変化で拒食に陥ってしまうこともあります。特にオスの方敏感だといわれているので、飼育環境はしっかりと管理してあげることが飼育のコツです。

また、セイブシシバナヘビは身の危険を感じると擬死行動といい、死んだふりをすることで有名な蛇でもあります。
飼育下で見られることは滅多にないと思いますが、苦しそうにのたうち回った後にぱたりと動かなくなる姿は中々の名演技です。
YouTubeなどにも動画が上がっているので気になった方は是非見てみてください。
他のポピュラーな種に比べて、少々気を遣う必要はありますが、初心者でも飼育できる独特の魅力を備えた蛇です。

飼育にややコツがいる種類

ケニアサンドボア

ボアの仲間で、ナイルスナボアともよばれます。
スナボアの名だけに地中棲、つまり砂の中で暮らしています。

寿命は平均20~25年で、全長は60~90cmほどに成長します。

体形は全体的に太く、短く、蛇というよりもミミズのような見た目をしていますが、よく顔を見てみるとボア独特のいかつさを持ち合わせている個性的な蛇です。

脱線しますが、同族でもあるアラビアサンドボアは中々面白い顔をしているので是非調べてみてください、本当にじわじわ来ます。

ケニアサンドボアは基本的に砂の中で暮らす蛇なので“床材を飼っている”状態になりがちだそうです。知人もケニアサンドボアを飼育していましたが、見れたらラッキーくらいのもんだと言っていました。

そんなケニアサンドボアの魅力は捕食シーンにあります。

ケニアサンドボアは地中に潜り、餌を待ち伏せして捕食する蛇です。
給餌の際には砂の中から勢いよく飛び出してから捕食するので迫力満載です。

ハンドリングは餌と間違えられない工夫が必要ですが、可能です。
また、温度変化による拒食をしやすい蛇なので環境をしっかりと管理する必要があります。

エメラルドツリーボア
グリーンパイソン

エメラルドツリーボアはボアの仲間で
グリーンパイソンはニシキヘビの仲間です。

それぞれエメツリ、グリンパイといった愛称で親しまれています。

どちらも平均寿命は10年と蛇の中では短く
エメラルドツリーボアは180~200cm
グリーンパイソンは160cm~200cmほどに成長します。


寿命が短い理由としてはどちらも飼育が難しく、神経質な個体が多いためといわれています。また、呼吸器系の疾患が多いので飼育の際は注意が必要です。

この蛇たちの魅力といえばその鮮やかな緑の体色です。
蛇といえば緑のイメージがありますよね。

エメラルドツリーボアもグリーンパイソンも樹上棲で、普段は木の上にコイル状に巻き付きじっとしています。

この二匹はぱっと見違いが分からないほど似た見た目をしていますが、まったく別の種で、似ている理由としては収斂進化(しゅうれんしんか)を遂げたためだと考えられています。

収斂進化とは環境や食物で種の違う動物が同じような進化を遂げることで、他に有名な収斂進化を遂げた動物といえば、サメとイルカ、モグラとオケラなどが該当します。

性格は基本的に荒く、ハンドリングに向いた蛇ではありません。
また、非常に神経質なので無理にハンドリングをすると拒食に陥ってしまうこともあります。

樹上凄の蛇は大抵どの種も牙が長く鋭利です。
これは主な食性が鳥類であるためですが、咬まれたらかなり痛いので咬まれないような工夫は必須です。(酷い場合縫うこともあります)

掃除や病院に行く際など生体に触らなければいけない状況になったときは、皮手袋やスネークフックという道具を使用することをおすすめします。

また、ルアリングといって餌をおびき寄せる為に尻尾の先を芋虫のようにうねうねと動かす行動をとることもあります。

ケージ越しでもバンバン飛んでくるような個体が多く、ガラスに激突して蛇が怪我を負う場合もあります。

なるべく刺激せず、なるべく構わず。
そんな、主に観賞するような蛇です。

また樹上凄のためレイアウトもそれに合わせる必要があります。
高さのあるケージに高温高湿での管理が必要なので、他のペットスネークと比べると多少手がかかる蛇ですが、そのワイルドさに魅了される方も多いです。

大きい蛇が飼いたい人におすすめの種類

ブラッドパイソン

ニシキヘビの仲間でヒイロニシキヘビともよばれています。
平均寿命は25~30年と長く、全長は150cmほどに成長します。

名前の由来は、本来は血のように赤い蛇という意味ですが、(飼育者の)血を見ることになるからブラッドパイソンなどといわれることもあります。

ブラッドパイソンは、スマトラブラッドパイソン、マラヤンブラッドパイソン、ボルネオブラッドパイソンの三亜種に分けられますが、最近ではそれぞれ独立した種として扱うところも増えてきています。

ブラッドパイソンといえば、とにかくそのたくましさで知られています。
パイソンの中でも際立つその太さはとても迫力があります。
よくいわれる例えが成人男性の太ももほどの太さです。

太さの割に全長はそんなにありません。特に尻尾は短く、がっちりとした体とのギャップがこの蛇の魅力のひとつでもあります。

性格は荒く、ハンドリングは難しいといわれていましたが、最近ではCB化が進んできたことにより、大人しい個体も増えてきました。
また、ベビーのころは荒くても大きくなるにつれ落ち着いてくる個体も多いといわれています。しかし荒い個体は荒いですし、大きくなるにつれ荒さが出てくることももちろんあります。

また、ケージもそれなりに大きいものを用意する必要があり、高温多湿かつ蒸れない環境を用意する必要があります。
色々と覚悟が必要な蛇ですが、荒くてもいいからとにかく大きくて存在感のある蛇がほしい!といった方にはおすすめできる蛇です。

カーペットパイソン

ニシキヘビの仲間でカーペットニシキヘビともよばれています。
名前の由来はカーペットのようにカラーバリエーションが豊富なことからきています。

寿命は平均20年、全長は180~240cmほどに成長します。
また、カーペットパイソンの中でも種類によっては4mほどにまで成長した個体もいるそうです。

先述した通り、カーペットパイソンは種類が多く、中には輸出が禁止されている国もあるので、繁殖方法が確立されていない種類のものは非常に高価です。

カーペットパイソンは中型のニシキヘビで
長く、すらりとした体をしています。

また、樹上凄といわれていますが、実際に止まり木などのレイアウトをしてもあまり登らず地面にいるなど、半樹上棲として扱われることも多いです。止まり木などのレイアウトをすると、気性が荒くなるといった意見もあります。

また、最近は改善されてきているようですが、ジャガーカーペットパイソンとよばれる種類は神経障害を持っている可能性が非常に高いです。

神経障害とは、スターゲイジング(頭を傾け仰ぎ見る行動)、うまく餌を食べられなかったり、のたうち回ったり、ひっくり返ったまま戻らないなどの症状が現れる障害で、カーペットパイソンのほかには、レオパードゲッコーのエニグマというモルフや、ボールパイソンのスパイダーというモルフも神経障害を持っていると有名です。

環境を整えてあげることで改善することもあるそうですが、完治するものではありません。症状の重い子には一生給餌の際にアシストが必要なんてこともあるそうです。


食欲は旺盛で、拒食も少ないので大きさを除けば初心者でも飼育しやすい蛇です。ボールパイソンとカーペットパイソンなら、カーペットパイソンのほうが飼育が楽だといった意見もありますよ。

オリーブパイソン

ニシキヘビの仲間で、その体色がオリーブの種の色に似てることから名づけられたと考えられています。

寿命は平均30年、全長は300cmほど非常に長く成長します。
基亜種として、ピルバラオリーブパイソンという蛇がいますが、ピルバラオリーブパイソンは最大で6mにもなるといわれています。

性格は温和で、ハンドリングも可能といわれています。
拒食もしづらく、初心者向けの大蛇として紹介されることもありますが、とにかく流通量が少ないです。

また高価で、他のポピュラーな種に比べ情報量が少ない、非常に大きくなるのでその体の大きさにあったケージが必要など大変な面もありますが、個人的にはとてもおすすめの蛇です。
太さはそこまで出ませんが、とにかく体色が上品で顔立ちも美しいです。

ただし性格面は個体差が激しく、温和な個体が多いのは事実ですが、荒い個体はとことん荒いそうです。
そうはいっても大きくなる蛇の中では穏やかな方なので、飼育スペースとお財布に余裕のある方には是非おすすめしたい蛇です。

最後に

いかがでしたか?
蛇といっても、ネズミを食べる蛇、虫を食べる蛇、タマゴを食べる蛇と食性も様々で、顔だちもいかつい子から可愛らしい子といて、本当に飽きの来ない動物です。

蛇飼育に手を出してしまうと、1匹じゃ物足りなくなってくるのが怖いところでもありますが、鳴かない、臭わない、手間がかからない、そんな他のペットとはちょっと違う魅力のある蛇を是非ペットとして迎えてみるのはいかがでしょうか。