都内駅前にある商業ビルの植え込みで、ハヤブサの仲間であるチョウゲンボウの子どもが発見されました。

スマートフォンで撮影したり、見物したりする人だかりも一時できていたみたいですね。鳥のすぐそばまで近づいて記念撮影する人もいたそうです。都会の駅前に現れた猛禽類のチョウゲンボウ、どんな鳥なのか、そしてその後どうなったのか、気になったので調べてみました。

どんな状況で発見されたの?

新型コロナウイルス対策で自粛が求められ、都道府県をまたぐ移動が全面解禁されて初の週末となった6月21日の日曜日、東京・調布市の京王線調布駅前にある商業ビル「調布パルコ」の入り口横の植え込みでチョウゲンボウの幼鳥が発見されました。警察官も出動する騒ぎとなりました。

パルコによると、午後1時ごろにその存在を確認したそうです。けがをしているようで動けずにいました。体長約15センチ、目をくりくりさせてじっとしていたようです。

鳥などを扱うペットショップによると、巣から落ちたか、飛び立った際に何かにぶつかった可能性があるとのことでした。実際、植え込みの上には巣があり、別のヒナも確認されました。

その後、4時間ほどその場にとどまっていましたが、午後4時ころ数人がかりでケースに入れ、警視庁が近くの交番へ移動、保護したそうです。

チョウゲンボウってどんな鳥?

ハヤブサ目ハヤブサ科ハヤブサ属に分類されます。和名は「長元坊」、英名は「Common Kestrel(コモンケストレル)」です。

成鳥の大きさ、模様を表にまとめてみました。オスよりもメスのほうが大きいですが、重さの目安はだいたい缶コーヒー1本くらいです。模様の違いは頭部と尾の2か所にあります。

翼を広げたときの大きさは68cm~76cmと、自身の背丈の約2倍になります。メスは褐色が強いので、オスより見た目は地味な印象です。

一方、幼鳥はオスの場合、尾は灰色地に横斑、先が白、腰が褐色気味なのに対し、メスは尾が灰色味のない褐色に横斑が多数、腰は尾と同じになっています。幼鳥はメスの成鳥と似ており、尾や腰以外の部分をよく見ないと、性別を見分けるのは難しいとされています。

鳴き声は「キィキィキィ」「キッキッキッ」と聞こえます。

チョウゲンボウは頻繁に「ボバリング」と言われる低空飛翔をします。急降下で地上の獲物を押さえつけるように捕えます。主食はハタネズミという報告もありますが、他にも小鳥や大型昆虫など、地域、環境や季節によってさまざまな生物を獲物にしています。

もともとチョウゲンボウは身近な存在であるようです。長野県中野市の十三崖(じゅうさんがけ)では、チョウゲンボウが集団営巣しており、1953年(昭和28年)11月14日に史跡名称天然記念物に指定されています。

また1970年代、東京の埋め立て地で建造物に巣を作り、「猛禽類の都市化」として話題になっていました。

つい先日も、利根川をはさんだ茨木県取手市と千葉県我孫子市を結ぶJR常磐線鉄橋のチョウゲンボウが話題になっています。6月15日朝日新聞で、地上30メートル近い高さにある、小判型の作業用穴を利用して集団営巣したことが取り上げられています。

  

参考記事:子育てに最適の環境? 常磐線鉄橋にチョウゲンボウの巣

  

このように、チョウゲンボウは市街地でよく見かける存在になっています。獲物となる小鳥類が豊富なこと、天敵が少ないこと、ビルなどの構築物が、ねぐらや繁殖場である断崖の代わりになっていることなどが理由として挙げられます。

実際、調布では以前からチョウゲンボウが確認されていたという情報もありました。

  

参考記事:Canon global「チョウゲンボウ」

  

 ただ、プロ・ナチュラリストの佐々木洋さんによると、今回の調布駅前の件は、「比較的低いところに巣がある可能性もある、という点で、珍しいケースだと思う」とのことでした。

駅前のチョウゲンボウのその後

交番で一時保護されたチョウゲンボウですが、保護された21日の夜に、調布パルコの屋上から逃がしました。この日見つかった場所の、すぐ近くの換気口の奥へ小型カメラを入れてみると、ヒナの姿を確認することはできませんでしたが、かすかに鳴き声が聞こえたそうです。卵の殻のようなものも確認できたという情報もありました。

翌22日、あらためて現場に行ってみると、またヒナが見つかったそうです。保護された個体かどうかは確認できていませんが、確かにチョウゲンボウは調布駅前で生息しています。

まとめ

鳥の都市化はチョウゲンボウだけに限らないようです。

先月15日には新宿駅東口の前で、絶滅危惧種のミゾゴイも目撃されています。ほぼ日本でのみ繁殖するサギ科の夏鳥で、環境相レッドリスト2020(絶滅のおそれのある野生動物の種のリスト)では、「絶滅危惧Ⅱ種(UV)」に位置付けられています。「絶滅の危険が増大している種」になります。

今まで馴染みのなかった動物を見かけるようになったのは、コロナ禍・自粛の影響もありそうです。しかし、意外な出会い、気づかずにいた発見は身近なところにこそあるのかもしれませんね。