高知県四万十市のトンボや魚の展示施設である「四万十川学遊館」のネコが行方不明になっていましたが、無事に戻ってきたそうです。
見習い館長をしていた3歳のネコ「クロ」のことですね。真っ黒な毛と金色の目が人気の雌ネコについて調べてみました。
クロのいる「四万十川学遊館」ってどんなところ?
四万十川学遊館は、「学遊館あきついお(トンボ館とさかな館)」のことで、トンボ王国というトンボ保護区の一部にあります。トンボ王国の中には他に「四万十トンボ自然公園」があり、この施設と併せて「公益社団法人トンボと自然を考える会」が管理、年中トンボたちが住みやすい環境づくりをしています。トンボ保護区としては世界初であり、77種のトンボが見つかった日本一のトンボ保護区でもあります。
見習い館長になったクロ。その仕事ぶりは?
学遊館で生活するようになったネコですが、そもそもどのような経緯でやってきたのでしょうか?
2017年の6月上旬に、四万十市の市道で、ふらついて車にはねられそうになっていたところを学遊館のスタッフに保護されました。保護された当時は、両目とも目やにで覆われていて、獣医師の診断では重い眼病も患っていました。また、全身にハジラミの卵も付着していました。病気で、もらい手もなかったため、学遊館で世話をすることになったのです。
ただ、学遊館を運営する「公益社団法人トンボと自然を考える会」には資金がなく、餌代や治療費、飼育ケージ代を負担できない状況でした。そこで同館が募金を呼びかけました。寄付は東京や九州からも集まったほどでした。こうした支援のおかげで、クロはすっかり元気になりました。
そして、警備や閉館後の館内パトロールを主な仕事とする見習い館長になりました。正午から1時間は事務所の警備、それから閉館時間後の館内の見回りをしていました。いずれはネコ館長になることが目標です。
クロの様子は写真展で披露されたこともありました(2019年7月27日から約1か月間開催されました)。見習い館長としての仕事ぶりだけでなく、高所に登ってイタズラする表情や子猫のころのかわいらしい様子などの写真がありました。
しかし、見習い就任から2年ほど経っていたこの時期もまだ、館長就任のお墨付きはもらえていませんでした。
何故いなくなってしまい、どうやって戻ってきたの?
いつも小さなおりのベッドで暮らしていたクロでしたが、先月5月3日の朝、姿が見えなくなりました。新型コロナウイルスの影響で学遊館は休館中でした。そのため館内で放し飼いにしていましたが、少し開いていたドアから出てしまったようでした。
同館のスタッフが近所を探しましたが、なかなか見つかりませんでした。いなくなった3日の夜は、ほぼ徹夜でクロの帰りを待ったようです。「ネコを捜しています」と写真付きのポスターを作ったり、SNSで情報提供を呼びかけたりしました。
そのかいあって、6日後の5月9日、無事にクロは見つかりました。9日の夜に、同館から南に約1キロ離れた住宅に住む夫婦から、クロを見つけたと電話が入り、スタッフが駆け付けました。クロは、1階の押し入れの隅に丸くなっていました。いなくなっていた間、餌を食べなかったのか少しやせていたように見えましたが元気でした。
普段世話をしている平林歩子さん(34)は、「連れて帰ると甘えてすりすりしてきた。寂しかったのでしょう。元気で見つかってよかった」と話していました。
また、1年前に写真展を企画した1人で同館スタッフの野村彩恵さん(35)も「クロは小さな冒険に出て、パニックになって、帰る道がわからなくなったと思う。目薬を差す必要もあり早く見つけてあげたかった。多くの人から情報や励ましのメッセージをいただきました。クロは1か月ほど休ませて、また、お客さんを迎えます」と語っていました。
まとめ
無事発見の知らせを受けたときは、全国のファンから「毎日心配していました」、「見つかってよかった」といった励ましのメールが届きました。さらに埼玉県の女性からは、「万一、再び迷子になった時のために使ってください」と小さなネコ発見器もプレゼントされました。さっそく首輪に付けています。
コロナ禍の影響もあり閉館していた学遊館ですが、5月12日に無事再開しました。そして宣言通り、しばらく休んでいたクロも6月1日に無事職場復帰しました。
ただ、今回の騒動で、館長への道のりはやや遠くなったようです。外へ出るのも少し怖くなった様子で、甘えてくることも多いのでしょう。前出スタッフの野村さんによると「今回の騒動でみなさんにご心配をかけ、クロは本来なら見習い館長から降格ですが、現状維持にしました。でも、館長へのハードルは高くなりました」とのことです。
大きな困難を何度も乗り越えてきたクロ。館長への道のりは長いかもしれませんが、これからの成長も温かく応援していきたいものです。
40代の主婦兼ライターです。ネコは家族がアレルギー持ちのため、鑑賞専門ですが、いつも癒されています。
今は夫、中学生と小学生の3人の子ども、ハムスターと生活しています。