6月21日、高知県室戸市沖の定置網の中で絶滅危惧種のオサガメが死んでいるのが見つかりました。解剖したところ、腸の中からレジ袋と透明の袋の計2枚が出てきました。

人間の生活に便利なレジ袋も安易に捨ててしまうと、オサガメのいる海まで流れ着いて悪影響を与えてしまう、ということですよね。

7月1日からレジ袋の有料化が義務付けられました。プラスチックゴミ削減を大きな目的にしているけれど、オサガメなどの野生生物にも関係ありそうです。

そこで、オサガメはどんなカメなのか、なぜレジ袋が腸から出てきたのか、気になったので調べてみました。

オサガメはどんなカメ?

(1)オサガメのサイズ

オサガメはカメの仲間では最も大きい生き物です。爬虫類の中でも最大クラスで甲羅の長さが120~190㎝くらい、頭まで入れた体長は2m以上にもなり、最大3m近くまで成長します。体重は600~900㎏と1トン近くあります。

(2)甲羅やウロコが柔らかいので、深海まで潜れる

他の種のカメとの大きな違いは、なんといっても甲羅が柔らかいということです。皮膚でできた甲羅には縦方向に7本の峰のような突起があり、ゴムのような感触です。甲羅にあたる部分は小さな骨でできていて、それが皮膚を覆っています。この柔らかい甲羅のおかげで深海の水圧にも耐えられるようになっていて、広範囲のエサを取ることが可能になっています。ただ、船などにぶつかったときは致命傷を受けることがあります。

(3)胸ビレが長いので、長距離泳げる

足は他のウミガメ同様ヒレ状になっているので、泳ぐのに適しています。体長とほぼ同じくらいまで長くなった胸ビレのおかげで、泳ぐスピード、持久力も優れています。ウミガメでは最も速い時速24㎞で泳ぐことが出来ます。

(4)生まれた場所に戻る習性がない

太平洋、大西洋、インド洋、そして地中海までも生息地としており、中でも人の手があまり加わっていない砂浜を産卵場所に選ぶ傾向にあります。ほかのウミガメのように、生まれた砂浜に戻るようなことがありません。もともと産卵の場所だった砂浜が浸食され環境が変わると、別の砂浜で産卵が増加した、というように流動的に対応しているようです。日本では2002年、鹿児島県奄美大島の『嘉徳海岸(かとくかいがん)』でのみ産卵が確認されています。

(5) 爬虫類でありながら唯一の恒温動物

通常、爬虫類は変温動物で、大気の影響を受けることが多く、気温が低いと体温が下がってしまいます。それを避けるために、冬は冬眠したり、日向ぼっこをして体温をあげたりします。それに対して恒温動物である私たち人間のような哺乳類や鳥類は、周りの気温にかかわらず、体温を一定に保つ機能を持っています。食べ物からエネルギーをとって、それを熱に変えているわけですが、オサガメは爬虫類でありながらその機能を持っているのです。このため、水温の低い深海でエサをとるために潜ったり、温度差のある広い範囲で活動したりできるのです。

(6)心臓が発達している

多くの爬虫類は2心房1心室ですが、オサガメの心臓は私たち人間と同じ2心房2心室です。これによって肺に送る酸素と体に送る酸素を分けることが出来ています。そして、呼吸によるエネルギー生産を効率化しています。

(7)主食はクラゲ

クラゲはほとんどが水分であるためカロリーは低いのですが、オサガメの巨体や運動量を考えると、1日1000㎏もの量を食べる必要があります。そのため、水深1000mほどの深さまで潜ってエサを探します。

また、クラゲを効率よく食べるため、口の中は牙のようなトゲがノドの奥までびっしり生えています。オサガメは海水と一緒にクラゲを吸い込みます。その時、クラゲを口の中のトゲに引っ掛け、海水のみを吐き出しています。この時口の中のトゲは、クラゲを粉々にします。


体温維持や遊泳のためにクラゲを食べ続ける必要があるオサガメですが、プラスチック製のレジ袋はクラゲと見かけが似ているため、間違って食べてしまうことが多く、消化器官の障害や摂食不良が心配されています。

 

高知のオサガメはどんな状態で見つかったの?

今回定置網で死んでいたオサガメは、体長1m24㎝の若い個体で、網に絡まって動けなくなり窒息死したとみられています。

大腸などから出てきた2枚のプラスチック製袋は、42㎝×25㎝と30㎝×20㎝でした。

今回の死因にレジ袋は関係ないようですが、海にレジ袋があることでクラゲと間違って飲み込んでしまい、消化不良や食欲不振を起こして死に至るケースは世界各地で多数報告されています。オサガメだけに限った事ではありませんが、レジ袋をはじめとする海洋汚染で命を落とす生物は少なくありません。

 

まとめ

オサガメの化石は1億年以上も前の、白亜紀後期の地層からも発見されています。独特の進化の結果、今日まで生き延びてきたようです。それが今、絶滅危惧種となっています。

産卵場所の開発や、産卵後に人間に踏まれて卵が破壊されることなどが原因として挙げられています。

また、ふ化した子ガメは月に照らされた明るい海を目指して進みますが、町の明かりを間違えてしまい、陸に向かって息絶えてしまうという報告もあります。

いずれも人間の影響ですが、さらに、レジ袋をはじめとする人間が出したゴミによる海洋汚染も大きな問題となっています。ゴミとしてきちんと処理しても、レジ袋が存在する限り環境を破壊するリスクはゼロではありません。

まず利用を控えることが、海に生きる生物の未来を守ることにつながると意識する必要があります。


レジ袋有料化。私たちの生活と遠く離れた場所の命にもつながっていることを、今一度考える機会にしてみませんか。